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  • 自治体間の相互補完で実現!
    脱炭素の新しい取組「ソーシャルクレジット」

    伊丹市 総合政策部グリーン戦略室
    主幹 松下 高之さん
    主任 齋藤 槙吾さん

カーボンニュートラルの実現にむけて、伊丹市はカーボンクレジットを創出する自治体やそれを活用する企業との広域連携による脱炭素社会モデル「ソーシャルクレジット」の創出と活用に官民共創で取り組まれています。CO2 の排出削減とCO2の吸収の両面から、市民や企業、市が一体となって取り組める仕組みを構想し、実現。今回は、自治体・企業と連携したクレジットを創出・活用する新しい事業モデルについてお聞きしました。

【伊丹市の呼びかけで、3自治体+企業で取り組むスキームを実現】
伊丹市は環境価値の創造に自治体として取り組んでいます。カーボンニュートラルを実現するには環境価値の1つであるカーボンクレジットの創出・活用する取り組みが必要ですが、私たち伊丹市は、従来の単純なカーボンクレジットの創出・活用ではなく、市民や企業、市が一体となって取り組める仕組みを考えていました。様々な調査・検討を行っている中で、本市と姉妹都市である島根県飯南町が間伐・下刈りなどを行い、森林を適正に管理・育成することでCO2吸収を創出する「グリーンカーボンクレジット」に取り組まれていると知りました。これがきっかけとなり、これまでの両市町の姉妹都市交流の枠を超えて、「環境体験なども踏まえながら環境と経済の好循環を目指すカーボンクレジット共創事業」ができないか両市で検討を始めることとなりました。
また環境省近畿地方環境事務所主催の脱炭素の共創マッチングの自治体職員対象の研修会にて、伊丹市と飯南町が構想している事業について紹介したところ、偶然にも同席されていた大阪府阪南市と研修会に講師として参加されていた(株)ソーシャル・エックスから本事業について大変共感いただきました。当時、阪南市は「里海づくりとブルーカーボンクレジットで町を発展させたい」と考えられており、(株)ソーシャル・エックスは、カーボンクレジットを活用した事業の構築・運用・取組拡大のサポートとして、伊丹市と飯南町が構想している事業に参画いただくこととなりました。

【3自治体が抱える地域課題】
ここで改めて、伊丹市、飯南町及び阪南市がカーボンクレジット共創事業に取り組むうえでのそれぞれの地域課題を整理します。まず、伊丹市は都市型の地域に該当し、森や海などの自然資源が乏しいことから「CO2吸収源となる豊かな森・海との繋がり」が課題として存在します。一方で、飯南町や阪南市は自然資源が豊富であることから「森林・海洋資源を活用した地域活力の創出」が課題として存在します。
 このような「都市地域伊丹市」「森林地域飯南町」「海洋地域阪南市」の3自治体が抱える地域課題を解決することと、カーボンクレジットの創出・活用につなげることを同時実現できる事業を目指し、共創事業の検討を行うこととなりました。【地域課題も解決するカーボンクレジット共創事業】
3自治体の抱える課題解決策を盛り込んだ、カーボンクレジット共創事業の具体的な取組内容は次のとおりです。

飯南町では、伊丹市民が育てた苗木を直接市民が現地にて植林活動する「飯南・伊丹 苗木の里親プロジェクト」を実施することにより、グリーンカーボンクレジット創出に必要な森林資源を保全しております。また、活動に参加した伊丹市民が宿泊や飯南町民芸品のしめ縄製作など体験することで地域活力の創出にも貢献しております。

阪南市では、海岸の清掃や海草アマモの種子採取などの活動に伊丹市民が参画する「阪南・伊丹 海の森プロジェクト」を実施することにより、ブルーカーボンクレジット創出に必要な海洋資源を保全しております。また、活動に参加した伊丹市民が現地で食事や地域特産品の購入などを行うことで地域活力の創出にも貢献しております。

伊丹市では、上記のプロジェクトを通じて、伊丹市民に対する豊かな森や海の魅力を体験できる機会を提供しています。
加えて、飯南町・阪南市で創出される「グリーンカーボンクレジット」や「ブルーカーボンクレジット」を伊丹市庁舎から排出されるCO2量へオフセット(削減)することで、実質排出ゼロとなるCO2ゼロ庁舎を国内で初めて実現しています。

互いの地域資源を活用することで、飯南町・阪南市では「森・海を活用した地域活力の創出」、伊丹市では「森・海づくりを通じた脱炭素」が実現しており、このように地域課題を解決しながら環境と経済の好循環を生み出す取組で創出されるカーボンクレジットを私たちは「ソーシャルクレジット」と呼称しています。

本取組を持続可能なカタチで運営するための工夫も存在します。
伊丹市では住宅用太陽光発電導入を推進すると共に太陽光発電によるCO2削減を纏めてカーボンクレジットを創出する「たみまる太陽光クラブ」を運営し、創出されたカーボンクレジットの販売収益をプロジェクトの活動財源の一部に充当しています。
また、㈱ソーシャル・エックスは、本事業の構築・運用・サポートを実施し円滑な事業運営に努めると共に、他自治体・企業への取組拡大を目指しております。

【今後の取組】
この取り組みを他の自治体や企業にも拡充していくことを目指しています。
環境省・経済産業省とも連携し、本取組が地方創生やESG投資の観点からも意義があることを示し、自治体・企業への広がりを目指します。

※協力:ローカルSDGs・脱炭素分科会

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